熱中症対策のポイントを解説！
近年、夏季の気温上昇に伴い、職場における熱中症による労働災害が多発しています。この状況を受け、厚生労働省は労働安全衛生規則を改正し、令和7年6月1日より施行することとなりました。 本記事では、改正の背景、具体的な対策、事業者が講じるべき措置に加え、有効な暑熱対策として注目される遮熱対策についても解説します。
改正の背景
- 熱中症による死亡災害の増加：熱中症による死亡災害は、令和2年から令和5年にかけて高い水準で推移しており、深刻な状況です。
- 死亡災害に至る割合の高さ：熱中症は、他の労働災害と比較して、死亡災害に至る割合が約5～6倍と非常に高いことが示されています。
- 屋外作業でのリスク増加：死亡者の約7割が屋外作業従事者であり、気候変動の影響による更なるリスク増加が懸念されています。
初期対応の遅れ：熱中症死亡災害の分析結果として、初期症状の放置や対応の遅れが大きな要因であることが指摘されています。
改正のポイント
今回の改正の基本的な考え方は、「見つける」「判断する」「対処する」の3つの段階に分け、現場の実態に即した具体的な対応を求めるものです。
- 体制整備：事業者は、労働者が熱中症の症状を報告しやすい体制を整備し、周知することが義務付けられます。 また、職場巡視やバディ制、ウェアラブルデバイスの活用など、労働者の状況を積極的に把握するよう努める必要があります。
- 手順作成：熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に、迅速かつ的確な判断ができるよう、緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先、作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等の措置に関する手順を作成し、周知することが義務付けられます。
- 対象となる作業：改正の対象となるのは、「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業です。 ただし、これに該当しない場合でも、作業強度や着衣の状況等によっては熱中症のリスクが高まるため、準じた対応が推奨されます。
具体的な熱中症対策
事業者は、改正労働安全衛生規則に基づき、以下の熱中症対策を行う必要があります。
- WBGT値の活用：WBGT値（暑さ指数）を測定し、作業強度等に応じて基準値と比較することで、作業環境の暑熱リスクを評価します。 基準値を超える場合は、作業場所のWBGT値の低減、作業内容の変更、作業場所の変更等の対策を講じます。
- 作業環境管理：屋外作業場所では、直射日光や照り返しを遮るための簡易な屋根等を設置します。 また、冷房を備えた休憩場所や日陰等の涼しい休憩場所を確保します。
- 作業管理：作業時間の短縮、暑熱順化期間の設定、水分・塩分の摂取指導、通気性の良い服装の着用、作業中の巡視等を行います。
- 健康管理：健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理指導、労働者の健康状態の確認等を行います。 睡眠不足や体調不良等が熱中症の発症に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
- 労働衛生教育：労働者に対し、熱中症の症状、予防方法、緊急時の救急処置、事例等について、あらかじめ教育を行います。
有効な暑熱対策遮熱対策について
労働安全衛生規則に基づく対策に加え、工場や倉庫などでは、遮熱対策が有効です。
遮熱対策とは：遮熱対策とは、太陽光に含まれる熱エネルギーを反射することで、建物内の温度上昇を抑制する対策です。
遮熱対策のメリット：
労働環境の改善：作業場所の温度上昇を抑制し、熱中症のリスクを低減します。
生産性向上：快適な作業環境は、作業効率の向上に繋がります。
省エネ効果：空調設備の負荷を軽減し、電気代を削減します。
テクノ・バークシャーの遮熱対策サービス
テクノ・バークシャーでは、工場や倉庫向けの遮熱工事サービスを提供しています。
特に効果が高い遮熱工事(屋根や壁に遮熱性の高い塗料を塗布するなどの工事)も弊社では多数実績がございます。
熱中症発生時の対応
熱中症のおそれがある者に対する処置の例として、厚生省労働省が公表している資料にフロー図が掲載されています。
早期発見と応急処置：作業者の様子を注意深く観察し、異変があれば熱中症を疑い、涼しい場所への移動、身体冷却、水分・塩分補給等の応急処置を行います。
医療機関への搬送：意識がない、自力で水分摂取ができない等の重症の場合は、速やかに医療機関へ搬送します。 判断に迷う場合は、＃7119等の専門機関に相談することも有効です。
情報共有と周知：熱中症対策の手順や連絡体制について、朝礼、ミーティング、掲示、メール等、様々な方法で労働者に周知します。
事業者に求められること
事業者は、改正労働安全衛生規則を遵守し、労働者の安全と健康を守るために、以下の対策を総合的に講じることが求められます。
- 体制整備
- 手順作成
- 作業環境の改善（遮熱対策を含む）
- 作業方法の改善
- 健康管理の徹底
- 労働衛生教育の実施
- 緊急時の対応体制の整備
おわりに
令和7年6月1日より施行される改正労働安全衛生規則は、職場における熱中症対策を強化し、労働者の安全と健康を守るための重要なものです。事業者は、改正内容を十分に理解し、適切な対策と遮熱対策を実施することで、労働災害の防止と快適な職場環境の実現に努める必要があります。対策をご検討の方は、是非テクノ・バークシャーまでご相談ください
