非常用発電機の実負荷試験とは?疑似負荷試験との違い・実施手順・工場での活用場面を解説

非常用発電機の実負荷試験は、実際の消防設備や非常用エレベーターを稼働させ、発電機がシステム全体として機能するかを確認できる唯一の方法です。疑似負荷試験では確認できない「連動設備の動作」まで含めて点検できる点が、最大の特徴です。

この記事では、実負荷試験の仕組みから、疑似負荷試験との違い、実施手順、そして工場で実負荷試験が選ばれる場面までを、設備管理担当者の目線で解説します。

この記事でわかること

①実負荷試験の仕組みと特徴

②疑似負荷試験との違い

③実施手順と停電段取り

④工場で選ばれる3つの場面

⑤費用と施工事例

 

実負荷試験とは:実際の設備を動かして確認する負荷試験の方法

非常用発電機は、消防法に基づき年1回の総合点検のなかで負荷試験を実施することが義務付けられています。この負荷試験の方法のひとつが、実負荷試験です。

実負荷試験の定義:発電機と実際の連動設備を動かして性能を確認する方法

実負荷試験とは、施設で実際に使われている消防設備や非常用エレベーターなどを稼働させ、その電力を非常用発電機でまかなうことによって性能を確認する方法です。商用電源を遮断し、発電機からの電力で実際の設備を動かすことで、本番さながらの状態を再現します。

疑似負荷試験との根本的な違い

実負荷試験と疑似負荷試験の根本的な違いは、負荷のかけ方にあります。

疑似負荷試験は「模擬負荷装置」という専用機材を使って人工的に負荷をかけ、発電機本体の性能を確認します。一方、実負荷試験は施設の「実際の設備」を動かして負荷をかけるため、発電機だけでなく、ATS(自動切替スイッチ)の切替動作や各設備への電力供給まで、システム全体を確認できます。

その代わり、実際の設備を動かすために施設を一時的に停電させる必要があり、稼働中の工場では実施のハードルが高くなります。

2種類の試験の詳しい比較や、どちらを選ぶべきかについては、下記の記事で解説しています。

▶ [非常用発電機の負荷試験とは?種類・周期・費用と選び方]

実負荷試験でしか確認できないこと

実負荷試験の価値は、疑似負荷試験では確認できない「システム全体の連動動作」を検証できる点にあります。
具体的に何を確認できるのかを見ていきましょう。

ATS(自動切替スイッチ)の実切替動作確認

停電が発生すると、ATSが商用電源の停止を検知し、自動的に非常用発電機を起動させて電源を切り替えます。実負荷試験では、この一連の切替動作が正しく機能するかを実際に確認できます。

消防法では、停電を検知してから発電機が電力を供給するまでの時間が規定されており(おおむね40秒以内)、この要件を満たせているかの最終確認としても、実負荷試験は重要です。

各消防設備・非常用設備への実電力供給確認

スプリンクラー、消火栓ポンプ、非常用照明、非常用エレベーターなどが、実際に発電機の電源で正常に動作するかを確認できます。疑似負荷試験では発電機単体の性能しか確認できないため、これらの連動設備が本当に動くかどうかは、実負荷試験でしか検証できません。

負荷変動下での発電機の安定性確認

モーターを使う設備は、起動時に定格の5〜7倍もの突入電流が流れます。実負荷試験では、こうした急激な負荷変動が起きたときにも、発電機が電圧や周波数を安定して維持できるかを確認できます。これも、一定の負荷をかける疑似負荷試験では再現しにくい検証項目です。

実負荷試験のメリット・デメリット

実負荷試験には明確なメリットがある一方、工場での実施には注意すべき点もあります。両面を理解したうえで、適切な場面で選ぶことが大切です。

メリット:発電機と全連動設備を一括確認できる唯一の方法

最大のメリットは、発電機本体だけでなく、ATSや各連動設備まで含めたシステム全体を一度に確認できることです。「発電機は動くが、連動設備が動かない」といった事態を防げます。

メリット:竣工・更新後の「本番さながら」の最終確認に最適

新設や更新の直後に、実際の非常時を想定した動作確認ができるため、竣工時の最終チェックとして高い信頼性が得られます。

デメリット:施設の一時停電が必要

実負荷試験では、実際の設備を発電機電源で動かすために施設を一時的に停電させる必要があります。稼働中の工場では、生産停止による損失や設備の再起動コスト、品質リスクが発生するため、通常の年次点検では実施が難しい場面が多くなります。これが、毎年の定期点検で疑似負荷試験が選ばれる主な理由です。

デメリット:負荷が安定しないため試験精度にばらつきが出る場合がある

実際の設備による負荷は変動しやすいため、模擬負荷装置を使う疑似負荷試験に比べると、安定した一定負荷をかけにくい面があります。

デメリット:複数業者の調整が必要で費用・工数が増加する

消防設備の担当、電気の担当、エレベーターの担当など、複数の業者や担当者が同時に立ち会う必要があり、調整の手間と費用がかかります。こうした調整も含めて一括で対応できる業者に依頼すれば、担当者の負担を大きく減らせます。

工場で実負荷試験が選ばれる3つの場面

実負荷試験は「毎年やる試験」ではなく、特定の場面で選ばれる試験です。工場で実負荷試験が適している代表的な3つの場面を紹介します。

場面① 発電機の新設・更新工事後の竣工確認

新しく非常用発電機を設置・更新した直後は、発電機が実際のシステムと正しく連動するかを確認する必要があります。据付工事後の最終チェックとして、ATSや各連動設備まで含めて動作を検証できる実負荷試験が最適です。

場面② 長期間未稼働後の再稼働前チェック

数年にわたって本格的な試験を行っていなかった発電機や、長期間停止していた設備を再稼働させる前には、システム全体の動作を実負荷で確認しておくと安心です。

場面③ キュービクル・変圧器更新など電源系統の大規模改修後

キュービクル(受変電設備)や変圧器など、電源系統全体を改修した後は、発電機からATS、各設備への電力供給が正しく再構成されているかを実負荷で一括確認することが重要です。

実負荷試験の実施手順:停電段取りから報告書提出まで

実負荷試験で担当者が最も不安に感じるのが「停電をどう段取りするか」です。実施の流れを把握しておけば、計画的に準備を進められます。

事前準備①:関係者との調整(1〜2ヶ月前から開始)

実負荷試験は停電を伴うため、早めの調整が欠かせません。

  • 停電可能な日時の社内調整(生産計画・品質管理部門との確認)
  • 電力会社への事前連絡(必要な場合)
  • 消防設備点検業者・電気保安担当との日程調整
  • 消防署への事前届出の確認

事前準備②:当日の担当者配置と役割分担

実負荷試験では、各設備の動作を同時に確認するため、役割分担が重要です。

  • 発電機担当(起動・停止・数値記録)
  • 消防設備担当(スプリンクラー・消火栓の確認)
  • エレベーター担当(非常用エレベーターの動作確認)
  • 電気担当(ATS切替・各盤の監視)

試験当日の流れ(所要時間:半日〜1日)

当日は、おおむね次のような流れで進みます。

商用電源の切断・発電機起動:ATSの切替動作にかかる時間を計測します。

各設備への電力供給確認(約30分の負荷運転):消防設備・エレベーターなどを実際に動かして確認します。

各設備の動作記録・異常確認:各担当が動作状況を記録します。

商用電源への切り戻し・発電機停止:通常の電源状態に戻します。

結果確認・不具合事項の記録:発見された不具合があれば記録し、対応を検討します。

試験後:報告書作成と消防署提出

試験後は点検結果の報告書を作成し、消防署へ報告します。報告書の作成から提出代行まで対応できる業者であれば、担当者の事務負担を軽減できます。

 

実負荷試験の費用目安と疑似負荷試験との比較

実負荷試験の費用は、関係する設備や人員、調整の手間によって変わります。容量別の目安と、疑似負荷試験との違いを把握しておきましょう。

容量別の費用目安

実負荷試験の費用は、発電機の容量や関係設備の規模によって変動しますが、一般的な目安は以下のとおりです。

発電機の容量 費用の目安
100kVAクラス 30万〜50万円程度
200kVAクラス 50万〜80万円程度
300kVAクラス 80万〜120万円程度

※関係設備・人員・調整コストを含みます。設置環境や施設の規模により変動します。

費用が高くなる理由:人員・停電コスト・複数業者調整費

実負荷試験が疑似負荷試験の1.5〜2倍程度の費用になりやすいのは、複数の業者・担当者が立ち会う人員コスト、停電に伴う段取りコスト、各設備の調整コストが加わるためです。

大久保産業なら:電気工事から試験まで一括対応でコストと手間を削減

複数業者の調整は、担当者にとって大きな負担です。大久保産業のように電気工事から試験までを一括で対応できる業者に依頼すれば、調整の手間と中間コストを抑えられます。

大久保産業の実負荷試験 施工事例

大久保産業では、新設・更新工事の竣工時を中心に、実負荷試験に対応してきました。施工事例の一例をご紹介します。

施工事例

大久保産業の実負荷試験サービス:電気工事から試験・報告まで一括対応

大久保産業株式会社は、徳島県を中心に工場設備の保守・工事を手がけています。非常用発電機の実負荷試験では、新設・更新工事から竣工時の実負荷試験、消防署への報告まで一貫して対応できます。

実負荷試験で最も負担の大きい「複数業者の調整」を当社が取りまとめるため、担当者の手間を大きく減らせます。発電機の更新工事とあわせて竣工確認まで任せたい場合も、ワンストップで対応可能です。

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