非常用発電機の疑似負荷試験とは?実施手順・費用・工場での注意点を徹底解説
非常用発電機の疑似負荷試験(模擬負荷試験)は、施設を停電させることなく、消防法で義務付けられた負荷試験を実施できる方法です。
工場や病院など、稼働を止められない施設の定期点検として、現在最も多く選ばれています。
この記事では、疑似負荷試験の仕組みから、当日の実施手順、費用の目安、そして工場ならではの注意点までを、設備管理担当者の目線で具体的に解説します。
この記事でわかること
①疑似負荷試験の仕組み
②4つのメリット
③当日の実施手順
④工場の設置環境別の注意点
⑤費用目安と施工事例
疑似負荷試験(模擬負荷試験)とは
非常用発電機は、消防法に基づき年1回の総合点検のなかで負荷試験を実施することが義務付けられています。負荷をかけずに運転する無負荷運転だけでは、いざという時に出力が出ない、始動に失敗するといった不具合を発見できないためです。
消防法が定める年1回の総合点検と負荷試験
総合点検では、発電機に定格出力の30%以上の負荷をかけ、規定の時間にわたって連続運転し、性能を確認します。この負荷をかける方法に、「実負荷試験」と「疑似負荷試験」の2種類があります。
疑似負荷試験と実負荷試験の違い
両者の違いは「何を使って負荷をかけるか」にあります。実負荷試験は施設の実際の設備(消防設備やエレベーターなど)を動かして負荷をかけるのに対し、疑似負荷試験は「模擬負荷装置」という専用機材を使って人工的に負荷をかけます。
実負荷試験は施設を停電させる必要がありますが、疑似負荷試験は停電不要で稼働中に実施できます。この2つは、消防法上どちらを選んでも構いません。
2種類の試験の詳しい比較や、どちらを選ぶべきかについては下記の記事で解説しています。
▶ [非常用発電機の負荷試験とは?種類・周期・費用と選び方]
疑似負荷試験の仕組み:模擬負荷装置で定格出力の30%以上を安定再現する
疑似負荷試験では、「模擬負荷装置(負荷試験機)」と呼ばれる専用の機材を非常用発電機に接続します。この装置が電力を消費する「擬似的な負荷」となり、発電機に実際の運転状態に近い負荷をかけることができます。
模擬負荷装置の種類:抵抗負荷式と誘導負荷式の違い
模擬負荷装置には、大きく分けて2つの方式があります。
抵抗負荷式は、電気抵抗器に電流を流して熱として消費させる方式です。構造がシンプルで小型・安価なため、最も広く普及しています。一般的な疑似負荷試験ではこの方式が使われます。
誘導負荷式は、コイルによる誘導負荷を加えることで、実際の設備に近い力率(電圧と電流のズレ)を再現できる方式です。より実運転に近い条件で試験したい場合に用いられますが、装置が大型・高価になります。
どちらの方式で試験するかは、確認したい内容や発電機の仕様によって決まります。業者に依頼する際は、どの方式で実施するか確認しておくとよいでしょう。
定格出力30%以上という基準の意味
消防法では、総合点検の負荷試験において定格出力の30%以上の負荷をかけることが求められています。これは、30%未満の低い負荷では、エンジン内部に堆積したカーボンを十分に燃焼除去できず、発電機の実際の性能を正しく確認できないためです。一定以上の負荷をかけて初めて、本番に近い状態での動作確認とカーボン除去が可能になります。
試験中に確認できること
疑似負荷試験では、負荷をかけた状態での電圧・電流・周波数・エンジン回転数・排気の状態などを計測・記録します。これらの数値から、発電機が定格どおりの性能を発揮できているか、異常な兆候がないかを判断します。
疑似負荷試験の4つのメリット
疑似負荷試験が多くの工場で選ばれるのには、明確な理由があります。工場の運用実態に即した4つのメリットを紹介します。
① 停電不要:生産ラインを止めずに実施できる
最大のメリットは、施設を停電させずに試験できることです。実負荷試験のように実際の設備を動かす必要がないため、生産ラインを稼働させたまま発電機の試験ができます。
工場にとって、計画外の停電は生産停止による損失、設備の再起動コスト、製品の品質リスクなど大きな負担を伴います。疑似負荷試験ならこうした損失を発生させずに法定義務を果たせます。
② 安定した試験結果:一定の負荷をかけ続けられる
模擬負荷装置を使うことで、狙った負荷を安定してかけ続けることができます。実際の設備による負荷は変動しやすいのに対し、模擬負荷は一定に保てるため、試験結果の数値が安定し、発電機の性能を正確に評価できます。
③ 少人数・短時間で完結する
疑似負荷試験は、通常2〜3名・2〜3時間程度で完了します。実負荷試験のように複数の設備業者が立ち会って調整する必要がなく、段取りがシンプルです。担当者の負担も小さく済みます。
④ エンジン内部のカーボンを除去できる
定格30%以上の負荷をかけて運転することで、エンジン内部やマフラーに堆積した未燃焼カーボン(ウェットスタッキング)を燃焼除去できます。毎年疑似負荷試験を行えば、この除去を定期的に行えるため、発電機を良好な状態に保ち、本番での始動不良・出力不足のリスクを下げられます。
疑似負荷試験のデメリットと注意点
メリットの多い疑似負荷試験ですが、注意すべき点もあります。事前に理解しておくことで、適切な点検計画を立てられます。
連動する消防設備・ATSの動作確認は別途必要
疑似負荷試験は、あくまで「発電機本体の性能」を確認する試験です。模擬負荷装置に対して発電するため、実際の消防設備やATS(自動切替スイッチ)が正しく動作するかは、この試験では確認できません。
これらの連動設備の動作確認は、消防設備点検などで別途実施する必要があります。発電機単体は正常でも、ATSや連動設備に問題があれば非常時に機能しないため、トータルで点検計画を立てることが重要です。
設置環境によっては実施が難しい場合がある
模擬負荷装置は一定の大きさと重量があるため、発電機の設置場所まで搬入する必要があります。屋上や地下、狭小なスペースに設置された発電機の場合、装置の搬入経路が確保できず、試験が難しくなるケースがあります。
依頼前に、発電機の設置場所や搬入経路の状況を業者に正確に伝えておくと、当日のトラブルを防げます。
疑似負荷試験の実施手順:準備から報告書提出まで当日の流れ
実際に疑似負荷試験を行う際、担当者として何を準備し、当日どう進むのかを把握しておきましょう。流れがわかれば不安なく依頼できます。
試験前の準備:担当者が事前に確認しておく5項目
スムーズに試験を進めるために、事前に以下を確認・準備しておくとよいでしょう。
- 発電機の容量(kVA)・設置場所・燃料残量の確認
- 前回の点検報告書や整備記録の準備
- 模擬負荷装置の搬入経路・駐車スペースの確保
- 試験中の騒音や排気について、近隣や社内への事前周知
- 消防署への届出が必要かどうかの確認
試験当日の流れ
当日は、おおむね次のような流れで進みます。
業者到着・機器確認・装置接続(約30分):発電機の状態を確認し、模擬負荷装置を接続します。
無負荷起動・暖機運転(約15分):発電機を起動し、暖機運転を行います。
負荷運転(おおむね30分以上):定格30%以上の負荷をかけて運転し、電圧・電流・回転数などを記録します。
負荷遮断・冷却運転・装置撤去(約30分):負荷を落として冷却運転を行い、装置を撤去します。
結果報告:試験結果を確認し、不具合があればその場で説明します。
試験後の対応:報告書の受け取りと消防署への提出
試験後、業者から点検結果の報告書が作成されます。この報告書は保管義務があり、防火対象物の用途に応じて消防署へ報告する必要があります。報告書の作成から消防署への提出代行まで対応できる業者であれば、担当者の事務負担を軽減できます。
工場の設置環境別:疑似負荷試験の注意点
工場の非常用発電機は、設置環境によって試験の進め方や注意点が変わります。代表的なケースを紹介します。
屋外キュービクル型発電機の場合
屋外にキュービクル型で設置されている場合、模擬負荷装置の接続や排気の確認がしやすい一方、天候の影響を受けます。雨天時の作業可否や、排気の方向が近隣に影響しないかを事前に確認しておくとよいでしょう。
屋内・機械室設置の場合
屋内の機械室に設置されている場合は、換気と排気ルートの確保が重要です。負荷運転中はエンジンが熱と排気を発生させるため、十分な換気が必要です。また、模擬負荷装置を機械室まで搬入できるか、経路の幅や扉のサイズを事前に確認します。
100〜300kVAクラスの工場で特に注意すること
中規模工場で多い100〜300kVAクラスの発電機では、模擬負荷装置の容量が発電機の容量に対応している必要があります。容量に見合った装置を用意できる業者かどうか、事前に確認することが大切です。容量が大きい発電機ほど、装置の手配や搬入の段取りが重要になります。
疑似負荷試験の費用目安:工場の規模・容量別の相場
費用は、依頼を検討するうえで最も気になるポイントです。容量別の目安と、コストを抑えるポイントを紹介します。
容量別の費用目安
疑似負荷試験の費用は、発電機の容量や設置環境によって変動しますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 発電機の容量 | 費用の目安 |
|---|---|
| 100kVAクラス | 15万〜25万円程度 |
| 200kVAクラス | 25万〜35万円程度 |
| 300kVAクラス | 30万〜45万円程度 |
※設置環境・搬入難易度・地域によって変動します。正確な費用は現地確認のうえお見積りします。
費用を抑えるポイント:年次点検と同日実施
費用を抑える有効な方法が、消防設備点検や電気設備の年次点検と同じ日にまとめて実施することです。出張費や段取りの手間を共通化できるため、別々に依頼するよりトータルコストを抑えられます。
見積りを依頼する前に準備しておく情報
見積りをスムーズに進めるために、発電機の容量(kVA/kW)、設置場所(屋外/屋内・階数)、前回の試験実施時期を事前に整理しておくとよいでしょう。これらを伝えると、より正確な見積りが早く得られます。
大久保産業の疑似負荷試験 施工事例
大久保産業では、徳島県内の工場・施設で数多くの疑似負荷試験に対応してきました。施工事例の一例をご紹介します。
施工事例➀
施工事例②
大久保産業の疑似負荷試験サービス
大久保産業株式会社は、徳島県を中心に工場設備の保守・工事を手がけています。非常用発電機の疑似負荷試験では、100〜300kVAクラスの中規模工場を中心に、生産を止めずに法定点検を完了できる体制を整えています。
電気工事やキュービクル点検から、疑似負荷試験、消防署への報告書提出まで一括で対応できるため、複数業者に分けて依頼する手間がありません。試験で不具合が見つかった場合も、そのまま修理・部品交換まで対応できるのが、工場設備の総合業者である当社の強みです。
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